Thomas Demand

トーマス・デマンド | ドイツ | 「Ohne Titel」 | 2009年 | 87 cm×112.5 cm | シルバーの布に額入りのインクジェットプリント

トーマス・デマンド

トーマス・デマンド(1964年生まれ)が、人々の記憶に常に存在する重要でしばしば神秘的な場所を捉えた大判の写真。そこに見られる現実的な趣が、彫刻家であり写真家であるこのドイツ人の作品の特徴です。しかし、ベルリンに暮らす彼は、それらの場所を実際に訪れるのではなく、主に印刷物の写真をモデルに紙と段ボールでその場所を復元し、極めて本物に近いモデルを作ります。撮影が終わるとすぐにモデルは破棄されます。2008年に発表された「Presidency」シリーズもこの方法で制作されました。彼はこのシリーズで米国大統領選挙時における有名なホワイトハウスの大統領執務室を題材とし、政治的権力の象徴である机の向こうの椅子を空席のままにしました。デマンドが人物や背景を抜きに描いたその場所の歴史を補うことができるのは、見る人の記憶だけなのです。

モンブラン文化財団はこのシリーズの「Presidency I」を購入し、2011年にハンブルク市立美術館の現代美術館に移譲しました。デマンドはその作品で、空想と現実を巧みに操り、重層的な表現に対する私たちの目を磨きます。2009年にデマンドは、モンブランのために作業台を再現しました。作業台ではモンブランロゴのステンシルが手作業で丁寧かつ正確に切り抜かれており、モンブランの品質基準と哲学を象徴する場所となっています。